大切な「メル友」

 新しい年がやってきました。節目というものはありがたいもので、「今年こそは!」と、気持ちを切り替えることができます。そんな節目のひとつに素敵な出会いをしました。

 教育委員として初めて参加した、成人のお祝い会のことです。今の成人式はどんなことをするのかしら…無事に終わるのだろうか…私はどこに座ったらいいのかな…などと少々不安な気持ちで会場へ入ろうとしたら、顔見知りの民生委員の方が声をかけてきました。
「村松さん、おめでとうございます。」
「あら私、成人式じゃありませんよ!。」
「当たり前でしょ。新年のご挨拶です!」と言われて、大笑いしました。

 席に着いて会場を見回すと、私の斜め前のほうに車椅子をベッドのようにしたストレッチャーに、晴れ着の女性が横たわっている姿が見えました。表情はわかりませんが、華やかな髪飾りからもご家族の温かい思いが伝わってきました。セレモニーの間中、私は彼女のことが気になって仕方ありませんでした。

 終わって会場を出ると、私はすぐに彼女をみつけました。小走りに駆け寄って弾んだ声で「おめでとうございます。」と、言いました。彼女は無表情に天を仰いでいましたが目だけ私のほうを見ました。私が手話で話そうとしたら、すぐに母親らしき女性がバッグから透明の下敷きのようなものを取り出し、彼女の顔の前に差し出しました。
「この子はしゃべれないんです。手話もできないので、これで話します。」
そこには五十音表のようなものが書かれていました。彼女が目で追った文字を読み取って、教えてくれました。
「誰? 誰ですかと、聞いていますが。」
私はあわてて自己紹介をしました。話していることはわかるのですが、彼女は自分の意思で体を動かすことができないのだそうです。病気療養のため最近引っ越してきたことなどをご両親がお話くださいました。別れ際に、
「この子は、人差し指だけは自分で動かせます。だからメールならできるんですよ。」
と、おっしゃるではありませんか! 私はさっそくメールアドレスをお伝えました。

 夜、トキメキながらメールを開くと、見慣れないメールがありました。
「村松さん、えりです。きょうは会えてうれしかったです。お仕事のこと、いろいろお話してください……。」
短いメールでしたが、キーボードを前にしたえりちゃんの一生懸命なようすがうかがえて私は何回も読み返しました。一文字の重さが伝わってきました。直接言葉で会話はできなくても、こうしてメールで心の会話ができるのだということが、何よりも嬉しく感じられました。節目に出会った私の大切な「メル友」です。

掲載:「月刊公民館」(全国公民館連合館) 2004年1月号