20年後の出会い

「けつあつ測定」……といっても、これは運動会の種目です。椅子の上の風船をお尻(の圧力)で割る競技です。東京・国分寺市の障害者団体が主催する秋の運動会の人気種目です。車椅子の人もいれば、手を引かれて参加する人、ヘッドギアをつけているお子さんなど、年齢も障害もさまざま。風船の割れる音と歓声が体育館に響いていました。

この運動会の司会を頼まれました。私は朝から張り切ってでかけました。大きな声で爽やかに「おはようございまーす!」という第一声で、運動会を始めました。1番にならなくてもいい、参加できればいい、お互い無事を確認できればいい……。そんな雰囲気が全体を包み込んでいました。がんばってゴールをきった瞬間には、会場から大きな拍手がわきおこります。私もパン食い競争に参加しました。食べることなら、お任せあれ!

午後のプログラムには、手品とアコーディオン演奏のアトラクションがありました。手品を楽しんでいるとき、アコーディオンを演奏してくださる方が到着したので、打ち合わせに行きました。その男性は全盲で、奥様に手を引かれて体育館に来てくださいました。

「こんにちは。きょう司会をさせていただきます村松です。どうぞよろしくお願いします。」
そう言って握手をしたら、私の手を引き寄せて、
「村松さん、村松まきこさんですか? 以前ラジオの『NHKジャーナル』に出ていた村松さんですね?」
と、おっしゃるのでびっくりしました。

「僕らは、テレビは見ない代わりにラジオはよく聴くんですよ。あなたの声はよく覚えています。明るいからね。今、どうしているの?」
「NHKジャーナル」を担当していたのは、もう20年も前のことです。NHKで初めて担当した番組で、夜10時からの生放送。深夜に帰宅しては、番組の録音テープをきいて、ニュースの読み方を一生懸命練習したものでした。

「あの頃からずいぶんたつけれど、村松さん、全然変わってないねぇ。」
とっさに、お腹をきゅっとへこませている自分がおかしくなりました。少々体重も増え、皺も増えたけれど、声は年とっていないのかも!? 私にとってそれは嬉しい一言でした。アナウンサーとしてヨチヨチ歩きだった頃の私の声を覚えていてくださる方がいた! 私は、思いがけず20年前の自分に再会できたような不思議な感動を覚えました。

あれから1年。今年もまた9月に運動会が開かれます。今年はどんな出会いがあるかしら。声の若さを保つべく、磨きをかけておきましょう。

掲載:「月刊公民館」(全国公民館連合館)2004年9月号