趣味の力

 「先生、そのイヤリング、素敵ですね〜!どこで買ったのですか?」
 カルチャースクールの生徒さんたちに聞かれ、「これ、作ったのよ」と言うと、皆さん驚いた顔をなさいます。尊敬の眼差しで見てくれますが、じつは作ったのは私ではありません。退職してサンデー毎日生活が始まった夫です。

 音楽会で銀座に行った帰り、新しくできたビルに立ち寄ったところ、ネックレスやイヤリングなどのパーツが何でも揃う手作りアクセサリーのお店がありました。スワロフスキーのクリスタルを使ったネックレスは、買うと高価ですが、パーツは手ごろな値段で売られています。私は嬉しくなり目を輝かせて選び始めました、でも、自分で作ることを考えたら、細かい物は見づらいし、時間もないので諦めました。ところが、夫が興味を示し、小さなかごにイヤリングの材料を入れているではありませんか!作ってくれるというのです。手先が器用で、切れてしまったネックレスも容易に修理してくれますが、まさか本格的に作ってくれるとは……。本気モードで、作って欲しいスワロフスキーを選びました。

 こうして、あっという間に6個も作ってくれたのです。息子のお嫁さんにもプレゼントしました。喜んでくれたのは言うまでもありません。夫も嬉しそうでした。いつの間にか道具や拡大鏡まで購入し夫は張り切っています。なんて、いい趣味を持ってくれたのでしょう!?

 母は、若いころから編み物が好きでしたが、まとまった時間が取れず、還暦を過ぎたころから再び習い始め、80歳を過ぎてからも複雑な縄編みのセーターを編んでくれました。父はビデオカメラの撮影と編集が趣味でした。出かけた時はもちろんのこと、何気ない日常の暮らしにも我慢強くカメラを向け続けてくれました。孫の誕生はこの上ない喜びだったことが映像から伝わってきます。義父は詩吟が好きでした。1度聞かせてもらいました。70歳を過ぎているとは思えないほど張りのある声でした。照れた顔が嬉しそうでした。義母は、着物の端切れを使って小物入れを作ってくれました。大正琴も好きでした。趣味は生き甲斐だと、今は亡き4人の親が教えてくれます。

 私は、書道もピアノもスポーツクラブもすべて中途半端なことに気づき愕然としました。ボケたくなかったら、新しい趣味を持ち友達を作ることだと聞いたことがあります。趣味を見つけて人の輪を広げよう。夫の作ったイヤリングは大事なことに気づかせてくれました。

掲載:「月刊公民館」(全国公民館連合館)2016年7月号